遭難対策ノート 遭難事故対策ノート
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(山岳事故'山での怪我'の傷病者評価 心肺蘇生法
怪我人を背負って(捻挫,骨折,止血) 虫 へび 健康とは
凍傷 低体温症 高山病 基本救急セット 基本救急セットQ&A)
遭難対策の心構え 遭難対策基金運用規定
ツエルトビバーグ ヘリコプター救助
事故発生の知らせを受けたら アクシデントの現場で
夏山サバイバル 雪山サバイバル 救助訓練 ショートロープ研修
非常通信 救助隊編成 緊急連絡体制 Timtamのトップページに行く
遭難対策の心構え
Timtamでは、優れた技術や強い体力を持つこと以上に、山の仲間作りをすることが遭難対策として最も重要だと考えています。
・山に行くために発生する雑務(仲間が増えれば雑務も増える)を積極的に分担しましょう。
・所属する山岳会(or 山のサークル)の集会とか行事などを休まないようにしましょう。
・自分の技術レベルあった自分の山に後輩をつれて行くのではなく、
後輩のレベルに下がって後輩の山に行きそれを盛り上げるようにしましょう。
・半分は自分の行きたい山のために、半分は仲間の行きたい山のために活動をしましょう。
・仲間どうしのコミュニケーションを豊かにしましょう(Communication up、シーアップ)。
もし万が一、君が遭難事故にあった時、君の山での行動パターンや装備を知っていて、捜索救助の手順を効率的に考えてくれる仲間、…山の支度をして待機していてくれたり、対策本部に集まって来てくれる仲間、…リーダーシップを取ったり、記録係や会計係りになったりしてくれる仲間、…わずか200万円ほどの保険金を効率的に使ったり、それをおろすのに保険会社と交渉してくれる仲間、…地元の警察や山岳会などに何度も足を運んでいろいろ頼んでくれる仲間、…などなど、君はそんなふうに動いてくれるたくさんの山の仲間を持っていますか?。そんなたくさんの山の仲間を持っていることが、遭難対策基盤を持っているということなのです。
遭難対策基盤というと、登山届を出すこととか遭難救助保険や救助組織とかのことだと思う人がいるかも知れませんが、それは遭難対策基盤の一部でしかないと知っていなければなりません。
〜資金的な裏付け〜
自分の入ってる保険等の内容はよく研究しておきましょう。
@Timtamの講師が所属するガイド組合(NIAJ)の会長である天野博文氏が山岳保険を作っています。
@日山協の山岳遭難救助保険
日山協加盟の山岳会に入り、その山岳会の所属する都道府県山岳連盟でまとめて保険に入れてもらいます。保険の適用は所属山岳団体に登山計画書を提出してあり、団体で承認したものに限られており、しかも海外における山行は除かれるます。(年一口7200円の掛金で、150万の救助料。)
@登山用品店で販売している保険
登山用品店がそれぞれ保険会社と契約しています。内容は様々なのでよく確認してください。
@労山の山岳遭難共済
国内だけでなく、海外における山行もカバーしています。労山加盟の山岳会に入ってそこでまとめて保険に入れてもらいます。
@ハイキング保険
ハイキング保険は低額の加入料で高い保証がついています(ほぼ旅行傷害保険と同等です)。ピッケル・アイゼン・ロープ・三っ道具を使用するような山登りには適用になりません。
@都岳連個人会員遭難救助保険
都岳連救助隊やレスキューリーダーをバックに保険と救助のシステム作ってくれています。詳しくは都岳連に問い合わせて下さい。
@旅行傷害保険、ボランティア保険
ハイキング向け、ロープ・ピッケルなどを使用する登山は免責条項に入っていることが多いです。
@保険会社の山岳保険
登山者用の生命保険を作っている保険代理店がいくつかあります(登山情報誌等に広告あり)。
@保険会社の生命保険
ロープ、ピッケルなどを使用する登山は免責条項に入っていることが多いです。
@郵便局の簡易保険
郵便局独特の仕組みは研究しておくと良いでしょう。
@山岳ガイドの賠償責任保険
ロープを出すべき所で出さなかったなど、ガイドのミスが公式に認知された場合に降りる保険です。ガイド連盟に所属するガイドの人が入っていることが多いです。
@遭難対策基金
@基金が200万円あったとしても、ヘリコプターを2回も飛ばせばなくなってしまいますし、人を要請すれば一人一日10万円が出て行きます。しかし、遭難救助の初動に直ちに使えるお金の存在は大きいのです。Timtamでは、山岳遭難対策基金(基金準備約120万円)があります。
A2010年の現在、警察の救助ヘリコプターの質と量が充実してきました。ヘリコプター対策よりも、人的(遭難救助の技術および救助に出動してくれるという考えを持った人)な備え(遭難対策基盤の山仲間の部分)や、事故防止思想を育てることの方が重要となっています。
・・・・・・・※@は1999年の記述です。Aは2010年の追記です。
遭 難 対 策 基 金 運 用 規 定
制定:2003年3月7日 改訂2010.4.30
前 文・山岳遭難事故発生に際して、そのもたらす悲劇は最小限に止めなければなら
ない。そのための一助として、登山教室Timtamは遭難対策基金を設立する。
・遭難対策基盤とは金銭的な備えと、救助技術を持った山の仲間のネットワー
クである。登山教室Timtamではそのネットワークの中心を講師達が担ってい
る。従って、本基金は講師育成のための一助として役立たなければならない。
・山に行くにあたっては勇猛かつ果敢であってよいが、同時に遭難事故を防ぐ
ために細心かつ沈着でありたい。本基金が、遭難救助のために適用されるこ
とな� ��皆無であることを祈念する。
第1条・遭難対策基金(以下基金とする)は「登山教室Timtamの会員およびその会友
で、基金への入金を呼び掛ける行事(救助訓練、サバイバル訓練、等)に毎
年継続して参加し基金の積立を行っている者」(「 」内を以下基金参加者と
する)に対して、次の二項のために適用する。
@基金参加者の山岳活動における遭難事故の救助および捜索のため。
A基金参加者で将来、登山教室Timtamの講師となるだろう人の山岳ガイド
(山地、山岳、登攀、等)の資格取得のため。
第2条・基金の充実を計るための行事を年1回以上実施し一口1,000円の積立て金
の入金を基金参加者に依頼する。入金した積立て金は返金しない。
第3条・基金参加者が第2条の行事に1年以上参加しない場合は基金の適用から除くこ
とを原則とする。
第4条・基金の運営は登山教室Timtamの代表が行う。
・登山教室Timtamの救助委員会は基金の運営を補助する。
第5条・基金の適用は登山教室Timtamの代表の指示により行い被適用者に貸出す
ものとする。
・貸出しは無利子にて行い2年以内に返済することを原則とする。
第6条・登山教室Timtamの終了時(有料講習会を1年以上開催しない時)には、
基金運用規定の制定(2003年3月7日)にあたって「松浦寿治」氏より提供さ
れた元本(¥1,120,000)を同氏に無利息で返却する。元本を除いた残金は登山教
室Timtam救助委員会委員長に使途を一任する。
第7条・基金は登山教室Timtamが遭難対策基金専用の銀行口座に保管する。
・基金の残高は毎年1回程度基金参加者へ報告する。
・2003年3月7日現在の基金積み立て額は¥1,120,000である。
ツエルト必携&ツエルトビバーク
1、ツエルト必携
どんな山行にも絶対にツエルトをもっていきましょう。超低山のハイキングでも人口壁に
トレーニングに行く時でさえもザックを背負って行くなら、その中にツエルトが必ず入って
いるようにしましょう。
2、ツエルトビバークの三種の神器
ツエルト・・・底が割れているタイプのもの。ポールはいらない。パーティに一つといわず
いくつかあって良い。(個人装備と考えて各人がもっていてよい)
マッチ・・・・ザックの中、ポケットやポシェットの中など複数箇所に複数個持つこと。防水を
忘れずに。
メタ・・・・・・1人1箱20本
3、ツエルトビバークの用具
三種の神器・・・ツエルト、マッチ(スペアマッチも)、メタ
金属のコップ・・・火にかけられるもの
非常食・・・・・・・・チョコ、ガム、チーズ、コンデンスミルクなどコンパクトでカロリーの高いもの。
雨具・・・・・・・・・・ゴアテックスがコーティングしてあるものが良い。
非常衣類・・・・・下着がコンパクトで軽いのでおすすめ。(白でない方が良い。新素材でできた
ももひきと長袖シャツ)
懐中電灯・・・・・ヘッドランプ&超小型ペンシルライト(防水)の2種類を持っていると良い。
予備電池・・・・・懐中電灯と予備電池と予備電球はセットで持つ。
4、ビバークの方法
・ビバークを決定したら、すみやかに適地をみつけよう。座れればいい。上からの落石が
来ないところを選ぶ(もし来そうならばヘルメットをとらない)。風のこない所や水の取れ
る所はもっと良い。雨が降ってきたら雨水を集める工夫をしよう。ルンゼの中は水と落
石の通り道なので避ける。雪山の場合は雪崩の来そうな所を避ける(風下の吹き溜ま
りは危険!風を避けるとそこに引きずりこまれるので注意)。
・衣類を着込んで、トイレを済ませ、危ない所ならセルフビレーをセットして、2〜3人なら
横に並んで4〜5人なら車座になってザクの上に腰を下ろし、ツエルトをかぶる。底の
割れな� �ツエルトはかぶれないので良くない。ベンチレーターが上になるように(ベンチ
レーターはのぞき穴にもなる)してザックの下にツエルトの底を巻き込んで体重で固定
してしまう。風が強い時はツエルトを飛ばされないように注意する(ツエルトの予備があ
って良い)
・食料の残りを調査し食料を管理する計画を立てる。
・寒くなったら、石や金属(コップなど)の上にメタを置き火をつける。30分おきに一本燃やし
ても20本で10時間もつ。コンロを持ってればメタを使うのはコンロの燃料が無くなってから
になる。燃料の管理は食料の管理とともに重要だ。火をたいている時は寝ないで起きてい
る人の分担を決めておくこと。
・火がたけたらコップでお湯をわかそう。白湯でもいいし、チョコや生姜などを溶かして飲むと
とてもおいしいし気持ちもおちつく。
・厳冬期の高度の高い場所では、靴のひもをゆるめて足の指の凍傷をふせぐ。
・夜は長いけれど待っていれば必ず朝が来る。
・朝明るくなってからの行動も考えておく。
『ルンゼの懸垂になるから落石をよけた場所でピッチを切ろう』
『下からロープを引いて動かなかったらセットをなおしてくれ』
『ホワイトアウトだから一列になって方向を確認しながら進もう』
などなど。考えすぎる時は楽しいおしゃべりをしよう。
事故発生の知らせをうけたら
〜事故発生の知らせをうけてからのフローチャート〜
1、落ち着いていますか?
Yes(以下Y)・・・・2に進む
No(以下N)・・・・深呼吸をしたり、指を組み合わせたり、
胸に手をあてたりして落ち着くようにしま
しょう。落ち着いたら2に進んで下さい。
2、ノートを一冊用意しましょう。
3、ノートに今聞いた連絡の内容を5W1H(What,Who,Where,Why,
How)の要領で整理して記入しましょう。
情報をありのままに記入して脚色しないようにして下さい。また
今後あなたが連絡を発信したり、受信したりした場合はその日
時と内容をすべてこのノートに記入していくようにして下さい。
4、あなたの受けた連絡は事故処理のリーダーシップを取れない
人(遠い現地にいる人、あるいは在京でも山を知らない人、他
の山岳会の人など)からのものですか?
Y・・・・リーダーシップの取れる人(信頼できるリーダー会
員)が現れるまでは事故の報を一番にうけたあなた
がリーダーシップを取って事故処理にあたらなけれ
ばなりません。今リーダーシップを取れるのはあな
たしかいないと認識しましょう。・・・・5に進む。
N・・・・連絡の打ち合わせに従って行動を開始しましょう。
5、「単に下山が遅れているのだろう。現地のパーティが自力で処
理できてしまうだろう」と予測できますか?
Y・・・・9に進む。一部の人(山がわかっている人)に連絡
を開始する。
N・・・・6に進む。
6、あなたのアドレス帳(所属の会の会員名簿など)の上から順番
に電話をかけていきます。いつ誰に連絡したか、2で用意した
ノートに記入するのはもちろんですが、電話の相手にも必ずメモ
を書いても らいましょう。連絡をしているうちに次にやるべき
行動がみえてきます。
7、救助隊を編成しなければならない状況ですか?
Y・・・・あなたが設置した本部(会の事務所やあなたの家な
ど)に集合(山に行ける装備、捜索救助の用具を持っ
て)するように連絡しましょう。人がある程度集まったら
救助隊を編成しましょう。
隊員の役割分担を決めたら(あるいは決めるように指
示したら)出発させましょう。
隊員の役割文担 @捜索本部 A記録係(隊員名簿、
スケッチ、撮影、状況記録) B雪崩の場合は見張り
役(二次災害を防ぐ) Cサポート隊(ツエルト設置、湯
沸� �し) Dルート整備およびルート工作 E通信係
F会計係 Gその他
N・・・・9に進む。
8、関係機関に連絡しなければならないような事故ですか?
Y・・・・@警察 A所属山岳会 B会社 C家族
N・・・・9に進む。
9、連絡待ち
アクシデントの現場で
落ち着きましょう。ここは安全な場所なのかまず考えてみて下さい。
安全な場所に移動したら応急処置をします。それから次の行動を考えましょう。
〜事故発生時からのフローチャート〜
安全な場所か? → 安全な場所に避難
↓
待機、好天待ち ← 自力下山できるか? → 連絡ー救助活動
↓ ↓ ↓
現状の把握 装備、食料の点検 現地救助隊の編成ー救助本部設置
周囲の状況の観察 下山方法の検討
食料の管理 偵察 活動開始 ↓
↓ ↓ ↓ ←ーーーーー救助隊
ビバーク用意 下山 ↓
↓ 捜索打ち切りーーーーー発見できたか
連絡員がだせるか→→ ↓ ↓
| 長期捜索 応急処置ー本部・警察・家族へ連絡
, ↓
↓ | 救出方法決定→搬出・下山
連絡 |
↓ |
ビバーク ←←
↓
*自力下山できるか
沢登りノートのページにある怪我人や病人を背負っての脱出の項もお読み下さい。
健康とは
健康といえばWHOの「肉体的にも精神的にも社会的にもすこやかなこと」が有名ですが、それは1960年代に盛んに言われたもので、古いです。
WHOは1986年にオタワ憲章というのを宣言して、その中で下記のように健康を定義しています。
<<健康とは・・>>
「一人ひとりの病気や障害の有無に関わらず、生涯にわたり意欲的に学び続け、絶えず自己実現を図り、いかなる社会変化にも対応し、主体的に生き抜くことである。」
「自らの健康はコントロールし改善出来る。」
山岳事故(山での怪我)の傷病者評価
キーワード: 三つのS と ABC
一見軽症に見える人でも、必ずこの手順で身体全体を観察しましょう。特に、数メートル以上の転滑落、落石事故など、身体に大きな衝撃を受けたときは、命に関わる怪我を見落とさないことが大切です(軽症の人にこの手順を踏んでも、それで手遅れになることはありません)。
SS→S→A→B→C(一つの段階をクリア出来なかったら先に進んではならない)
SS:Safety & Scene 安全&状況
S:Supine 脊椎(頸椎)管理
A:Airway 気道があいているか
B:Breathing 呼吸をしているか
C:Circulation 脈/活動性出血
D:Disability 障害部位は� �意識はあるか
E:Environmental control
(辞書=scene→舞台,場面 supine→脊椎 disability→身体障害 environmental→周囲の,環境の)
Supineは医学用語で脊椎の意味があります。覚えにくければ 背骨(Sebone)で覚えてください
SS→
まず、近寄る前に必ず確認
@3つの安全(その場所・自分・傷病者)を確認する。
A状況の確認(何がどうしてそうなったのかを可能な範囲で確認)
B同行者がいれば安全な場所に待機するよう指示する。
C下降する場合は、傷病者の真上からでなくて、少し離れた落石を落とさない場所から近づく。